私は仕事柄日常的に建設業者様の決算書も他の行政書士さんがお作りになった建設業法上の建設業財務諸表も拝見いたします。そうするかなりの確率で「え??これってよく都(県)の審査の人がOKしたな!」と思うような建設業財務諸表を見ることになります。
建設業法違反を自認している建設業財務諸表
基本的に税理士先生がお作りになる決算書はでは工事の「原価」の中に「人件費」が入っていないことは多々あります。工事に携わる方々の給料・賞与などを販売費及び一般管理費に計上なさってる場合が多いです。結局それでも「税金の計算上」は何の問題もないですし、「粗利」も多くなり損益計算書の見た目もよくなります。しかし、いざ我々が「建設業法に則った財務諸表を記載して、行政庁に提出しようとした時」にそのままではよろしくないです。こちらで(行政書士側で)実態に合っておりかつ、建設業法に適した建設業財務諸表に「翻訳」してあげなければなりません。
では、原価に人件費(労務費)が入っていない決算書の何が問題になるのでしょうか?
一括下請負(丸投げ)は法律違反です
建設工事を請け負った後に、請け負った業者がそれを他の業者に、利ざやは稼いで、まるまる他業者さんに請け負わせることは「一括下請負」いわゆる「丸投げ」とされて、建設業法上では禁止をされております。これは当たり前ですが、きちんと条文になっており、建設業法第22条に「一括下請負の禁止」として
「建設業者は、その請け負った建設工事を、いかなる方法をもってするかを問わず、一括して他人い請負わせてはならない」としております。因みにこれが建設業法第22条第1項であり、2項にはきちんと「請け負った業者さんも同じく法律違反です」と記されております。つまり、丸投げは「出す方も、出される方も法律違反」なのです。
丸投げの罰則は?
丸投げをしたときの罰則ですが、もちろん規定をされております。建設業法第28条1項2号及び4号違反となり、この時点で「指示及び勧告」の対象となって、更に「指示及び勧告」にも従わない場合は同条第3項において、「一年以内の期間を定めて、その営業の全部または一部の停止を命じることが出来る」とされております。
でも、「罰則あっても、ばれないでしょ?」と思っていらっしゃる業者さんも多いですし、色々な契約の都合などもあって「この案件は何とか丸投げをしたいんですが。。」という業者さんもちらほらいらっしゃるのは事実です。しかし、「安心してください!ばれますから!」です。。。。
その証拠に東京都知事許可でも「処分事例(ネガティブ情報)」として立派に取り上げられております。
丸投げ自認の建設業財務諸表が散見されます
建設工事の一括下請負が発覚する経緯は定かではないですし(最も建設業法違反の摘発事例を見ているとやはり密告(所謂「チクリ」が多いのかな?と思われてなりません)、行政庁に提出をした建設業財務諸表から発覚する可能性が幾何かは・・疑問ですが、やはり、散見される「丸投げを自認している建設業財務諸表」は如何なものかと思っております。
丸投げ自認の建設業財務諸表とは?
では、丸投げ自認の建設業財務諸表とはどのような物でしょうか???それは「(工事)原価の中の”販管費(うち人件費)”」が「0円」とされている財務諸表のことをいいます。正直、「税務申告用に税理士先生が作ったPL(損益計算書)の(工事)原価」に人件費(百歩譲って労務費)を計上していない税務上の申告書は数多くあります。しかし、だからと言ってその会社さんが「丸投げをしている会社である」とは言えません。工事に直接かかった人件費(直接施工した人、監理監督をしたもの、両方含みます)を販売費および一般管理費の「役員報酬」や「給与手当」に計上するか、それとも「工事(製造)原価」の「労務費など」に計上するかは、そこはもう、作成した税理士先生などの「好み」の問題に近いと思ってます(税務の学問上とか税法上でどちらが正しいか、間違いかはさておきです)。
ただ、我々建設業法の専門家が会社様から「製造原価に人件費・労務費などが計上されていない、税務上の決算書」をお借りして、決算報告(事業年度終了報告)等に添付する「財務諸表」を作成する場合は、その内容の「丸々丸写しの転記」であってはなりません。
必ず、会社様の決算書の内容がわかるご担当者様や、ときには社長様に「数字の根拠」を求め、もしくは「会社の内部事情(実態)」をお伺いをして、それ相応のやり方で、きちんと「(工事)原価」の中に「労務費」などの何らかの人件費を加えていく作業は必須だと思っております。しかし、、、、これを知らずに、業務を受任なさっている行政書士が作った「丸々丸写しをしただけの建設業財務諸表」が散見されるのは悲しいことです。
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