経営事項審査については、建設業者さんの間では「ケイシン(経審)」という呼び名で呼ばれることが多いと思います。
この「経営事項審査」とは、どのような制度なのでしょうか。まずは制度の概要から見ていきたいと思います。
【経営事項審査とは】
経営事項審査が何かという点について、まずは以下の定義をご確認ください。
公共工事(国又は地方公共団等が発注する建設工事)を発注者から「直接」請け負おうとする建設業者が必ず受けなければならない審査です。 |
(東京都の経営事項審査の手引きより抜粋)
つまり、国や地方公共団体などが発注する建設工事について、直接に請け負おうとする建設業者が受けなければならない審査のことを「経営事項審査」といいます。
この制度は実際、定義のとおり「公共工事をしたい!」と考える建設業者さんが受審しています。
ここで一点注意なのが「国または地方公共団体等」の”等”という点です。つまり、国や地方公共団体以外にも経営事項審査の受審が必要な団体があるということです。
国や都道府県・市区町村以外で経審受審が必要な団体一覧
国の発注工事というのは各省庁が発注する工事のことです。そして、各省庁発注の工事を受注するための申し込み(入札参加資格を得ること)をするのと同時に、国以外で申請出来る団体(法人)があります。これには、以下のような団体があります(これを「インターネット一元受付参加機関」と言います)。
インターネット一元受付参加機関
(各省庁以外) |
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NEXCO東日本(東日本高速道路(株)) | |||
中日本高速道路(株) | |||
西日本高速道路(株) | |||
首都高速道路(株) | |||
阪神高速道路(株) | |||
本州四国連絡高速道路(株) | |||
独立行政法人水資源機構 | |||
独立行政法人都市再生機構(UR) | |||
日本下水道事業団 | |||
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 |
国や都道府県・市町村以外
次に、国(省庁)や市区町村以外で経営事項審査を受審した後、入札参加資格の申請を必要とする主な団体(法人。抜粋)もあります。
別個に工事業者名簿記載の申請をするもの |
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独立行政法人 国立印刷局、造幣局などの独立行政法人 |
日本中央競馬会(JRA) |
日本年金機構 |
日本放送協会(NHK) |
首都高速道路公団 |
東京都地下鉄株式会社 |
成田国際空港株式会社 |
西日本高速道路株式会社 |
日本私立学校振興・共済事業団 |
日本たばこ産業株式会社 |
(東・西)日本電信電話株式会社 |
北海道旅客鉄道株式会社 |
四国旅客鉄道株式会社 |
九州旅客鉄道株式会社 |
日本貨物鉄道株式会社 |
上記他多くの公共性を要する法人(もともとは国の機関だったものなので、民営化されたもの等) |
入札参加資格の申請は不要だが、経審の結果は求めてくる法人もあります
また、工事を請け負うために入札参加資格の申請は不要であるものの、「経営事項審査結果の提示」を求める法人もあります。これは、経営事項審査というのが「建設業者さんの通信簿」という側面を持っているためといえます。
日本郵便株式会社 |
東日本電信電話株式会社 |
東京電力ホールディングス株式会社各社 |
その他多数あります |
対外的信用のために経営事項審査を受ける
以上のように、国や地方公共団体等の工事を請け負うために受審するのが経営事項審査本来の趣旨といえます。
しかし、経営事項審査は建設会社を総合的・客観的に点数化することになるため、「対外的に信用のため」とか「元請けのゼネコンさんに言われて」経営事項審査を受審されるお客様もチラホラいらっしゃいます。
経営事項審査(経審)でお悩みの業者さんへ
経営事項審査を自社でなさっている会社さんは非常に多くいらっしゃいます。実際に東京都の審査の窓口にいらっしゃるのも半数位は業者さんとの事です。しかし、業者さんが審査を受けていらっしゃるのをたまに隣で見る機会がありますが、正直「あー、、後1~2回は審査の窓口に足を運ぶことになりそうだな」という感じで審査官からダメ出しを出されていることが多いです。
そして、その様に苦労して受けた経営事項審査も、その内容はどうでしょうか?
経営事項審査は「許可・不許可」ではないので、その申請書の記載内容に「本当は加点になったのに・・・」という事項が書き漏れていても、審査は進み点数は低くなったまま出されてしまいます。そして、一度受けた経営事項審査は受けなおすことは出来ないので、その「低く算出された点数」を一年間つかう事になります。
(例えばですが、本当は退職金規定があるのに「無し」としてしまった場合などは、「無し」のまま審査をされて点数が出てしまいます)
そして、そもそもですが経営事項審査はその資料の収集からして物凄く大変です。
各行政庁とも詳細な手引きを出していますが、正直こと経営事項審査の手引きに関しては「中級者以上用」となっており、初心者若しくは一年に一回自社の経審だけを行っている方が読んでも頭に「???」が浮かんで終わってしまいます。(手引き自体は詳細によく作られております。「ケイシンの複雑さ」がそうさせているのですが….)
そこで経審に関しては是非一度「専門の行政書士に相談すること」をお勧めします。
専門家が関与することで絶対とは言えませんが、今までよりも点数が高くなる場合も多くあります。